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PTSDとボウエン

日本は年度末ですが、こちらも税金の申告など各書類の提出や手続きが一段落つき、季節も春めいてきてホッとしています。

10月から始まる新しいボウエンのクラス、すでにボウエン・テクニックを使っている人向けの上級編講座の準備、サイトの改善(これは私の力が及びませんので、センスと才能がある方にお任せ)、Graham Pennington の「A Textbook of Bowen Technique」の翻訳、ボウエン関係のYoutubeに字幕をつける作業なども普段の施術と合わせて少しずつやっていきたいと思っています。

去年は「ボウエンはPTSDに効果があるのか?」を課題に、カリフォルニアでPTSDに苦しむ退役軍人たちへの施術をやってきました。以前、PTSDとボウエンについてネットで検索したところ、見つかったのはある一人の男性のPTSD が改善して、人生がよりよくなった!と話している動画があるサイトくらいで、ケーススタディとしては、もう少し人数が多いデータが必要ではないか、と思ったのがきっかけです。
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データとして50人くらいほしかったのですが、昨年は2割強の達成で、施術中と施術後のアンケートの質問もリサーチとしては不完全でした。
やり方、質問はこれから変えますが、とりあえず、60代、70代を中心とした退役軍人でPTSDを現在も患っている人に症状、薬やカウンセリング、どのようなことをしてきたのか、これまでに受けた施術などの歴史を訪ね、1週間おきに4回の施術をし、1回終わるごとの変化、4回終わってからの変化、感想などを記入してもらいました。平均的な答えの2つを簡単に紹介します。

【例1】ベトナムに2年いたELさん(66歳)
帰国してからも悪夢、夜中汗びっしょりになって飛び起きる、家中をパトロールして再びベッドへ、過覚醒(ぐったりするくらいの不安や刺激への過剰反応、周囲を絶え間なくチェックする)などがあり、薬でかなり抑えられてきていましたが、それでも30年以上、月2、3回はこのようなことがあった。腰痛が慢性化して絶えず痛みを感じていたが、4回の施術で、痛みのレベルは8から2へ、1ヶ月に渡るボウエンの施術の間、一度も悪夢をみたり、夜中起きたりすることはなく、いらいらや怒りっぽかったのがかなり減り、全体の10段階評価として8(1は改善なし、10は完全によくなったと感じる)と感じた、との回答。

【例2】1967-1968年ベトナム従軍、ABさん(67歳)
落下したり、暗闇で追いかけられたり捕まえられる夢を長年みて、起きると汗びっしょり。人ごみが苦手で避け、見知らぬ人と話すのも苦手。悪夢は過去5年はあまり見なくなってきていて年2回程度。背中に銃痕、腰の痛みが普段はレベル6から7、時に右側の神経の痛みがレベル10。4回の施術後、午後になるとレベル10になっていた右側の痛みは完全になくなり、腰痛は2から3に。知人でPTSDを患う人3人を紹介。

全てのエピソードをここでは紹介できませんが、完全に痛みが消えた=痛みの改善レベル10と答えた2人と、もともと身体的な痛みはなく「全く変化なし」と答えた1人を除いた12人の平均は、身体的痛みの改善レベル7.3でした。それに伴って、よく眠れるようになった、今までできなかったことができるようになった(長時間の運転や映画を観に行って数時間座っている)など、生活の質が向上したと答える人が7人いました。
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ちなみに「全く変化なし」と答えた人の回答は以下の通り。

【例3】1966-1970年 アラスカ、台湾、フィリピン、ベトナムにて従軍。JHさん(68歳)
1968年にベトナムで目にした光景の記憶によって精神的、感情的に影響を与えられているのを感じる。身体的痛み、制限などなし。子供の頃から狼瘡の症状があり40代で初めて診断を下されたが、食生活と祈りにより改善。現在は薬は飲んでいない。初回から徐々にリラックス感が高まり、特に4回目ではこれまでにないほどリラックスしている自分を感じたが、PTSDの症状(ベトナム戦争の記憶)には特に変化なし。
妻のコメント:最後の施術の後、1時間以内にアラスカで従軍していた時のおもしろいエピソードを話してくれた。23年結婚していて、戦争の経験を話してくれたのは初めてで、楽しい思い出を笑いながら話してくれたので感動した。毎回の施術ごとに、Jがリラックスして、いらついたり怒ることが少なくなっていった。一緒にいる時の、ストレスのある状況への対処もずっとよくなった。このまま続けたらもっといい人になると思う。
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本人は変化なしとしても、奥さんからしたら「好しい変化」は多少あったようです。こういう状況を数値化するのは難しく、効果があったかどうかも、本人の自覚と評価に大きく頼っているので、客観性に乏しいのを、なるべく数値化、データ化するのが今後の課題です。








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何をターゲットとするか

ボウエン・テクニックを教える時に、まずは「レシピ・バージョン」的な決まったムーブ、そして「だいたいこういう場合にこれを使うと効果があることが多いですよ」というのを教えていく。
次に、アセスメントで、体全体の重心のかかり方、どこに傾きがあるかなどの見方、それから部分的なアセスメント、と的をしぼっていく。

ボウテクのモジュールの指導は、だいたい「腰痛の人には、腰とハムストリングをやるといいですよ」「それでダメなら骨盤も」2回目、3回目には、体全体をもみて「肩や足首もやってみましょうか」みたいな感じだけれど、これもまだまだ直接的で、主要なところに迫っていないことが多い。
というよりも、(私も含めてですが)結果重視で「痛い」と聞くと「そこをなんとかしよう」という、ある意味バンドエイド的な対処をしていることになる。

もちろん、ぎっくり腰で歩くのも辛い、とか座骨神経痛で痛い痛い、と最近始まったばかりの痛みで来る人には、その痛みを軽減する対処をする。けれども、時々ぎっくり腰になる、座骨神経痛が治ったと思ったら、数ヶ月後にまた少し痛くなる、など問題が長期にわたっていたり、繰り返している場合は、原因は痛みの箇所以外のところにあることが多い。足腰周辺の筋肉は、他の部分の結果としてうまく機能しなくなる。

とりあえずの痛みへの対処をしたら、今度は長い目でみて、その主原因を取り除くセッションを組み立てていく。その説明をして、こうなるのは、ここに原因があるかもしれないので、などと話すと大抵の人が思い当たることがあるようだ。そして、かなり昔の交通事故や、子供時代、出生時のトラウマにさかのぼることも多い。

トラウマ 脳 33

表面の痛みを取り除いていくと、結果としてターゲットとなる原因は時間をさかのぼることになる。





Profile

Bowen Japan

Author:Bowen Japan
日本人初のボウエン・テクニックのインストラクター。American Bowen Academyにて、マスタークラス修了後、ABAのアソシエイト・インストラクターとしてカリフォルニア州と東京、千葉でクラスを指導のち、Romney Smeeton氏に師事する。現在は、カリフォルニアと日本で施術しつつ、日本でのセラピスト育成のためにBowen School Japan®にてクラスを開催している。

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